小金井市財政の謎シリーズ第二弾 人件費の分析

小金井市の財政の謎の続きです。

今回は人件費についてです。

 各ページの後にはブログでの解説を入れました。

 是非こちらもじっくりと読んでいただければと思います。

 マンガ版で一気に読みたい方はこちら

マンガ版小金井市財政の謎~人件費編~の解説をします。

 細かい解説は不要というつもりで作っているのですが、制作途上で考えたこととかを書いていきいます。

 小金井市財政の謎の中でも人件費を取り上げました。その中での人件費の部分のリメイク程度を当初考えていたのですが、いろいろ考えているうちに、今回コミポで編集できる限界に近い31ページもの大作になってしまいました。(31ページで大作とかいうと笑われますが、私にとってはということで)

 人件費というのは非常に取り上げづらい話題と感じていました。いきなり人のふところに手を突っ込むような話しだし、市民の中にもいろいろ意見がある。

 なんとなく公務員の人件費は高いよねと言っている人、公務員は無駄飯食っていると頭から思っている人、公務員の給料が下げるのはけしからんと思っている人。そしてそれぞれの立場の人同士が議論をするといったようなことはまずなく、一方的に発信するか、同じような考えの人同士が情報交換し、どんどん過激になっていっている。というような感じがします。

 そういうところに巻き込まれたくないというのは個人的にはあります。でも、影で言われていることは表に出して光に当てるべきではないか。「そんなのけしからん」で終わらせるのではなく、そう言うをいう人もいるんだと認識した上で、なぜそうなのか、どの程度事実と確認し得ることなのかを出来る部分は掘り下げています。

 なるべく切れ味は良くしようと思ってはいるのですが、やはり言い切ってしまえないことも多く、そこはマンガの登場人物に言わせることで両論併記にしている部分もあります。

小金井市財政の謎第二弾の今回の作品でも小金井市財政の謎第一弾と同様に小金井市に見立てた城(街?)を舞台にしています。

 ちょとテイストを変えてみることで読者層を増やすということも第一弾では多少ありましたが、第二弾ではすぐにデータ編に移ってしまうこともあり、その効果はあまり考えてません。

 今回はむしろ、きつい表現にならないためにつかっているという側面が大きい。

 例えば今回のもので、小金井市のリアルな街角で

「小金井市の財政が厳しいのは市役所の人の給与が高いかららしいわよ。」

「退職金5000万もらってるらしいな。」「ベンツ乗ってるらしいぞ。」

 なんて会話だと、ちょっときついですよね。

 でも、当事者がいない場だともっと都市伝説に近いところまで含めていろいろなことが言われています。

 が、「本当にそうなの?」ということを確かめることはまずありません。そのままスルーされて、言われたことだけが都市伝説のようにいつまでも残っていったりします。

 人件費の話は当事者同士が表立って話をしにくいがゆえに、お互い裏で話が広がっているようなところがありますが、このブログでは

 ・議論の質を高めるためにまずは事実をしっかり把握する

 ・基本的な仕組みを定量的な部分を含めわかりやすく説明する

 ことを旨としています。

 先生の「噂はともかく、まずはデータをみてみましょう。」のセリフは噂としていわれていることをそのままではなく、データをもって検証していく意思を示したものです。

ということで本編2ページ目からファンタジーからリアルに入っていきます。

 まずは他市との比較をしています。公務員全般の給与については後半で紹介します。

 もともとこの小金井の財政の謎は「なぜ小金井市の財政が他の市より苦しいのかという問題意識からスタートしているので、まずは相対的な給与水準についてのデータをしまします。

 他市との比較の視点はいろいろありますが、まずは市民一人あたりの職員給という観点で比較をしています。

 市民一人当たりがどれ位負担しているかということでわかりやすい視点だと思います。

 これで見ると一人あたり3万7千円で10番目、低くはありませんが、「小金井市の人件費はむちゃくちゃ高い」と聞いている人にとっては意外な順位かもしれません。


 ここから少し深く話をします。

 ①今回は「職員給」で比較をしています。人件費で比較する手もあったのですが、

  職員給の方が給与水準について語るのは適切と今回は判断しました。

  ちなみに、職員給に含まれない人件費は

  ・議員報酬  ・農業委員、消防団員などの報酬 ・市長、副市長の給与 

  ・共済組合の負担金 ・退職金 ・災害補償費

  なので、職員のための費用である共済組合や退職金が含まれないことになっています。

 ・ちなみに職員給には基本給だけではなく、期末手当、残業手当、駐禁手当などの各種手当て、

  臨時職員の給与が入っています。

②市町村決算状況調

 ベースとなる数字は総務省発表の平成23年度市町村決算状況調を使いました。

 市町村決算状況調べは全ての市についてそこそこ詳しいデータがエクセルで提供されているので非常に便利です。が、公表時期が遅いので平成23年度のものを使わざるをえませんでした。(現時点で平成24年度はまだ)

 ところがこのマンガの中では平成24年度のデータを使っている部分もあります。今回はなるべくデータの出典を明記するようにしています。

昨日は市民一人あたりの職員給の比較をしましたが、ここで終わってはいけません。

 もう一段階深く見る必要があります。

 そのための一つのやり方が因数分解です。

  今回は職員給/職員数 と 職員数/人口に分解しました。


 分母と分子に同じものを入れて分解することになります。

 原理的には何を入れてもよいのですが、適切な指標を入れないとかえってわからなくなるので注意が必要です。(ちなみにこのわけかたは比較的普通の分け方だと思います。)

 とりあえず下半分はちょっとギャグの要素を・・・。

第3回で市民一人あたりの人件費を比較し、前回一人あたりの人件費を2つの要素に因数分解しました。

 今日はそのうち職員一人あたりの職員給の比較です。

 平成23年度のデータによると小金井市は約650万円で26市中19番目。

  人件費が高いと言われている割に、、、意外に思ったかもしれません。

そもそも650万円が高いかどうかという点については後の議論とします。

 前々コマでは市民一人当たりの人件費(職員給)を 職員一人あたりの職員給と市民一人あたりの職員数に分解し、前のコマでは職員一人あたりの職員給の比較をしたので、このコマは職員数の比較です。

小金井市の職員一人あたりの人口は174人です。グラフを見ると棒が短くなっていますが、短いほど職員数が多いということになりますので、グラフの見方には注意が必要。

 いつぞやの近隣市に比較して職員一人あたりの人口が少ないことをもって周辺市よりも人を減らしていると解釈して質問をしてしまった議員がいるぐらいなので要注意です。


 一人あたりの職員については人口規模の影響を受けます。仮に国分寺市と小金井市が合併しても企画部門や財政部門の人数が倍必要になるわけではありません。一方で一定以上の人口規模になると保健所が出てきたり、建築審査の部署が必要になったりするなど人が増える要因も出てきます。

 また面積も絡んできます。同じ人口でも面積が5倍になれば小学校は増えるし、支所や公民館も増えます。そのためそれを管理する人も増えることになります。


ということで、人口10~15万人の範囲で比較してみました。

 そうすると小金井市は7市中2位。結局多いって話です。

市民一人あたりの人件費は11位、職員一人あたりにすると19位。

人件費が高いと言われる割にはそれほどでもないという印象を受けたのではないでしょうか。

一方、人件費を測る指標としてはラスパイレス指数があります。


 ちなみにラスパイレス指数は人件費の分析のための指標ではなく元々は層別に加重平均で出したもので、経済学の分野では物価の比較などに使われるようです。ちょうど偏差値が学力を測るだけのものではないのと同じ。


 その内容は先生がお話している通り。

 それに対してのリアクションが「ふーん。」であることがポイント。

 なぜ「なるほど!」ではないのか。

 こんな長い内容を一回聞いただけでなるほどレベルになるのは不自然だし、とりあえず細かいことはわからなくても「給与水準の高さを表している」というところだけでもつかんでもらえればよい。という趣旨からです。


ラスパイレス指数をクラス会で寿司食うはちょっと無理があったなあと思いつつ、これ以上によいものがなかなか思いつかず。

 くをのぞけば、9文字中6文字あっているし、他のもパ→カ、デ→レ、す→くと段も同じなのですが、うーん。

ラスパイレス指数は110.6で高い方から3番目。たしかこれは平成24年度の結果。平成23年度は1位だったかと。

 一人あたりの職員給が高くないのにラスパイレス指数が高いのはなぜかというと、おそらく平均年齢が低いためと思われます。

 平成24年度の平均年齢は39歳で26市で一番若い。

 なぜそうなっているかというと一時期多かった50代の職員が定年で退職していったから。

 平成19年ごろは逆に50代の職員が40%ぐらい、平成15年ぐらいに遡るとなんと半分が50代というかなり偏った年齢構成になっていました。現在はその反動で若返っているということであろうと思われます。

 逆にこのまま職員の年齢があがっていくと、将来的には人口一人あたりの職員給や職員一人あたりの給与の実数が他の市と比べても高いという状況になってくるであろうと考えられます。

人件費の高さを表すもう一つの指標が経常収支比率における人件費割合です。

これは30.2%で26市で最も高くなっています。


 正直言ってこれをこのページの中で解説するのは極めて難しい。

 そもそも経常収支比率という概念自体がわかりにくい。

  ので、ごくごく雑駁にいうと収入の割に人件費が多いということ。


 小金井市が財政難と言われているのは経常収支比率が99.0と26市最悪レベルに達しているから。

 経常収支比率とは経常的に入ってくる使途が限定されていない収入(A)のうち、経常的に出ていく出費で使途が限定されていないお金が充てられている出費(B)の比率(B/A)のこと。

 このうち分子であるBは人件費、扶助費、公債費などに分類されます。

 そのうちの人件費(B’)をAで割った(B/A)が上記のグラフの数字ということ。

 これが高いということは、財政難の原因の一端が人件費にあるのでは?ということなのです。


 さらに解説します。


B'をもう一度噛み砕いていうと

「経常的に出ていく出費で使途が限定されていないお金が充てられている人件費」のこと。


意外とややこしいのはA。

Aを構成しているのは

・市税(都市計画税を除く。)

・地方譲与税

・交付金(利子割、配当割、株式譲渡割、地方消費税、交通安全対策)

・地方交付税

このうち話をややこしくするのは地方交付税。

 地方交付税を除いた部分は概ねその市の財政力(経済力)に比例します。

 地方交付税は雑駁にいえば、その市が必要とする費用として総務省が算定した額-その市の収入として総務省が算定した額の差額になるので、財政力の差はほとんどなくなり、Aはその市の財政力というよりは、「その市が必要とする費用として総務省が算定した額」に近くなります。(武蔵野市のように極端に財政力が高い市は別です。)


従ってAの意味は

 ・武蔵野市などの財政力が強い市はその市の財政力を表し(財政力)

 ・その他の市はその市が必要とする費用として総務省が算定した額(財政需要)

 の2つの意味が混じってしまっており、その中で比較するということになってしまっています。

とりあえず、これまでのまとめです。

 これまでは小金井市と他の市を比較していました。

 その一方でそもそも公務員の人件費が高いのではないかという議論も尽きません。


 ここから先は財政分析の範疇を超えているかも知れませんが、市民の中でも広くそのような声がある以上、可能な限り客観的なデータを元に、仕組みなどの説明も交えて解説することを試みました。


 次回以降が今回の作品で苦労した部分であり、挑戦的な部分でもありますのでじっくりお読みいただければと思います。

話はファンタジーに戻ります。

 ここで登場する街を守る家来たちが表しているのはいうまでもないですが、公務員という想定です。

 行政の仕事は多岐にわたりますが、話を単純にするために魔物から街を守っているという想定にしています。

次のページで一方から出てきたのは市民たちです。

 ここから家来と市民が対立している構造を漫画に投影していきます。

ここからが後で出てくる公務員と人件費に関する論点の布石となります。

 さて、最初のパートは「民間企業に比べて公務員は楽」というイメージがあること、

 忙しいといっても内部の調整が多くて、市民に役立つことをしているの? という論点を表現。

 このドラゴンは非常に難しい問題、端的にいえば小金井のゴミ問題を暗示しています。

難しい問題が解決できないことについて、なんでできないと責めたことについて、

「そんなの難しい、だったらお前らやってみろよ」と逆ギレしますが、これに対して、「それでできたら公務員はいらない」と反撃を受けます。

 そして「そもそも給料貰いすぎ」と人件費の話題に移ってきます。


 公務員の方がどう考えているかわかりませんが、人の給与のことに口を出されたら「余計なお世話!」と思うのは当然かと。給料を下げるべきという話がでるとかならず出るのが、「モチベーションの低下」。まあこれは公務員に限ったことではない。

 

 あ!変わりましょうじゃなくて「代わりましょう」だな、誤字誤字・・・。


 それはおいといて、公務員は首にならないと言われているという論点をここで提示しています。

公務員の給与に関する論点の提示が続きます。

 ここでは公務員と同じ職種なのに給料の格差がある点をとりあげています。

 結局これが民間委託を進めようという原動力になっているのですが、一方で民間委託をすると質が下がるといった話も出ます。その議論がでるときには暗黙のうちに公務員はノウハウがあり、モチベーションが高く、仕事の質が高いということになっています。

 一方で「お役所仕事」といわれているように、仕事の質の低さを指摘する声もあります。


 また口に出していう人はいませんが、公務員は人気のある職場であり、難しい試験を通ってきているので、「自分は普通の人より優秀なのに、なんで民間人と同じなんだよ」と心の中で思っているひともいるかもしれません。本当にそれを言ったら喧嘩になりますが。

 ここは漫画なので、喧嘩になってしまうところを想定しています。

ファンタジーから徐々に現実の世界におりてきます。

 前回の喧嘩のシーン。どう収めるか難しいところでしたが、とりあえず王様に出てきてもらって解散ということにしました。要は喧嘩は解散したけど問題は解決していないのです。

 あと王様の頭についているものは王冠のつもりですが、全然それっぽく見えないな。


 ここまでが頭出し、次回から分析に入っていきます。

さて、ファンタジーから現実に戻っていきます。

 前のページの最後セリフ「公務員に対する批判は強まっているわね」を受けています。

 前振りの中で公務員に対するイメージ、批判がいろいろ出ていましたが、改めてここでまとめています。

 ここで上げている項目は、一般的なものだと思います。

 このままだときついので、「えらい偏見だな」を入れています。


 あと、ときどき聞くのが「俺の金で飯食ってるくせにけしからん」的な発言。改めて文字に起こしてみるとなんだかおかしい。

 考えてみれば、私達は自給自足していない限りは他人のお金で飯を食っています。

 なのにこういう発言がでるのはなんでだろう?ともう一段考えてみると右下のコマにいきつきました。

 多分こんなところかな。


 自分がお金を稼ぐのにはどちらかというとむとんちゃくな人でも、他人が儲かっているというのは我慢がならないってことは意外と多いのではないか。そういう中から出てくる話なのかななどとも思っています。ちょっと脇道にそれましたが。

公務員に関して言われていることについて、整理しつつ解説します。

まずは、公務員は9時5時(定時で帰れることを意味する言葉です。一応解説。)で楽という説。

国家公務員はともかく、地方公務員はとかく楽だというイメージがあります。

 市役所はオープンなのでカウンターの後ろで寝ているとか、新聞を読んでいるとかいう話は伝わりますし、駅前のヨーカドーでよく目撃されるという方もいます。

 が、それは一昔以上前の話という人もいますし、すごく忙しいという話も聞きます。


 断片的な情報ではなんともいえないので、ここではこのブログでは可能な限りデータでわかるものを取り上げて検証します。

 

 何が楽か?というのは定義がいろいろですが、客観的に測定可能なものとして、残業時間を取り上げました。精神的なつらさとかは統計からはわかりません。

 資料によると一人あたりの年間残業時間は184時間。ひと月あたりだと15時間。

 (漫画では年鑑になっていますが、年間のまちがい)


 個人的にはそれほど多くないと思うのですが、それは自分の会社を基準に考えてしまうからで、厚生労働省の勤労統計調査によると平成24年度の平均の残業時間は月10時間程度らしい。

 ほんとに?まあ疑っても仕方ない。


 いえるのは平均すれば民間と比べてそれほど楽とは数字上はいえないということ。

 一方、他の市と比べてみると一人あたりの残業代は町田市に続いて2番めに高いようです。

小金井市が多摩の他の市と比較して、残業時間が多い、特に国分寺市より100時間多いことが議会などでは指摘されています。

 残業時間が多い理由はデータからだけではわかりません。

 小金井市が取り立てて他の市より仕事が大変というわけではないし、人員が非常に足りないというわけではない(むしろ多い)。

 となると仕事の効率が悪いということになってしまうのですが。ただ、それを測る指標はありません。


 職員にとっては「残業しなければ楽だと言われ、残業すればするなと言われ」と釈然としないところなのかも。

 ところで残業時間を考えるのに平均で考えてもそれほど意味はありません。

 民間企業でも同じですが、非常にばらつきがあります。


 小金井市でも同様で一人あたりの残業時間が10倍以上も違い、なおかつ残業が多い課の人数のほうが少ない課よりも少ないという現象が生じています。

 残業時間が月に3時間ぐらいということは単に定時+3時間分の仕事があるというよりは定時の時間帯でも空きの時間が相当あり、何かの時に残業するぐらいのイメージだと思います。

 一方年間600時間というのはほとんど毎日9時以降まで残業しているイメージです。

 なので、時間外が少ない部署から多い部署に人を回すと全体的には残業時間は減る方向と思われます。

 確かに職種の問題などがあるのでしょうが、もう少しなんとかならないのかと思います。

もう一つ公務員についてよく言われることは、公務員はクビにならない(できない)。


 そこから出てくる話は、だからさぼってても大丈夫 → けしからん。 ということになるのですが、データの面から確かめるのは難しいので、ここではなぜそういうことになっているのかというのを私なりに整理しました。

 その前に、公務員はクビにならないと言われていますが、法令上はそんなことはありません。

 実際には組合との関係があるからなのか、単に部署を廃止したからとか、財政が苦しいので人数を減らすからという理由で解雇することは稀というか、まずありません。(確かめたわけではないので、事例をご存じの方は教えてください。)


 以前は民間企業(特に大企業)でも基本的には社員をクビにはできない。という話がありました。

 今では考えられないですが、昔事業計画を組んだ時には人件費は毎年上がるような想定をしていたものです。

 ここ15年ぐらいは経済状況が厳しく、経営状況による人員削減はそれほど珍しくはなくなりました。

仮に今後国の財政が破綻するなど、大きな経済状況の変化があれば、公務員はクビにならないというのは今は昔の物語になってしまうのかも知れません。

 が、今の現状では公務員は楽で(とは限らないのですが、世のイメージとして)クビにもならず、給料も高いという状況であり、はっきりと口に出していわないものの「なぜだ!ずるい!」と思いがちになります。


 そもそも公務員がクビにならない(しにくい)制度になっている理由として、私が思うのは猟官を防ぐためなのではないか。ということです。

 猟官ですよ、ようかんじゃないよ。

猟官とはなにかというと、例えば、ある市長が選挙に勝ったら市の部長や要職が市長の一族郎党や選挙で協力した人で固めてしまう(もちろん要職だけでなく、縁故のある人を採用するというところも含む)。そして、それ以前にその職にあった人はクビにしてしまうようなものです。

 なんだか中世のころのような話でそんなの無理だろと思うかもしれませんが、そういった政治的なものに行政運営が影響されないように公務員の身分保障(法令的に保証しているわけではないが。)があるのではないかと個人的には思っています。


 あらためてWikiなどで調べてみると、猟官制は絶対主義を打ち破り民主主義にしていくための道具だったのだとか。

 なるほど、王様の身内や家来で固められている統治機構を選挙で選ばれた指導者が認めた官僚に変えていくために猟官制は必要と思われます。

 ただ、それが行き過ぎると選挙協力や資金提供に対する一種の利益供与になってしまう。という中で少なくとも現代日本(の私の知る範囲)では猟官によって役所の人が首になったり急に登用されたりということはありません。

 

 ただ、現代日本の制度で問題ないかというとそうでもありません。

 例えば、首長が代わって方針が代わっても、人が変わらないので実態が変わらない(いうことを聞かなくても首にならないので変える動機もない)。

 働き方や意識を変えてもらおうと思っても変わらない。

 というデメリットもあります。


 アメリカあたりだと大統領選挙で勝った陣営が政府の上級スタップを占めたりします。もちろん留任するケースもあります。アメリカの場合は行政職員と民間企業の社員が行ったり来たりするので、そういったことが可能なのかもしれません。

 いずれにせよ、官職が政治的な利権の具にされず、かつ、民意を反映する必要があります。

 前半は現在の制度で概ね達せられているとすれば、後段はどうでしょうか。現在の制度は身分保障をしているかも知れませんが、後段について不満が高まってくれば大きな揺り戻しも考えられます。

 「民意を取り込む策をどこかで取り入れないといけない」と登場人物にいわせているのは、そういったところを含意しています。

今回は一休みということで組合についてです。

 人件費の話をすると必ずといっていいほど組合の話がでますが、その一方で表立って語られることはあまりありません。いろいろな政党とつながっていたり、政治力があるらしいとか、個人的には触りたくないところですが、このマンガは影になっているところに光を当てることを目指しているので、あえて紹介しています。

 その一方で、組合に関するデータは公開されることがまずありません。組合費はどれぐらいなのか、どれぐらいが加入しているのか、どのような活動をしているのか、嘱託の人は入っているのか。

 言説はそのままではなく裏付けるデータを重視するこのブログとしても取り上げにくい。

 というわけで「一休み」という扱いにしています。


 「うちの市は組合が強いから・・・」という話はよく聞きます。

 というか逆に「組合が弱いから気にしなくて良い」と言っている市の方には出会ったことがありません。何をもって強いというのかの指標もありません。

 なので、「小金井市は組合が強いから人件費が高い」というのは検証不能な命題となっています。


 このページの後半では「組合員(=職員)と市民」の利益のバランスがとれていないのではないかということを問題提起しています。組合員との調整が重要なことは言うまでもありませんが、組合員とは2年以上にわたってじっくり協議し、そこで決まれば市民はどうでもいいというような対応になっている。

というのはここ1年ぐらい市政に関心のある多くの小金井市民が感じているところではないでしょうか。


 ちなみに、和光市などでは組合との調整内容について公開しているようです。

 相当調整が難しかったと思いますが、「市民の知らないところで何かが決まっている」という感覚を持たれないためにも必要な取り組みではないかと思います。

ここから公務員の給料は高いと言われていることについてです。

まずは小金井市の職員の給与水準を調べてみます。

 決算カードをみると、職員一人あたりの給料の欄があり、そこには299,436円とあります。がそれを12倍したものと、他のデータから計算される職員給とは随分差があります。


  計算すると約45%が基本給以外の手当ということになります。

  おそらく民間企業よりはかなり手当の割合が高いのではないかと思いますが、、、、。


 手当の中で多いのが期末勤勉手当、わかりやすくいえば賞与。

 これらの手当は他市と比べて高いといわれているようですが、最近徐々に周辺市なみに改定されつつあるようです。

公務員の給料は高いといわれますが、何をもって高いというかは人それぞれだったりするので、一度整理しておく必要があるかと思います。

 実はこの話題については以前に私のブログでも取り上げているので、あまり長くは説明しません。(人件費は何をもって正統性を持つのか

 もっといろいろな観点があるのかもしれませんが、こんなところでしょうか。


 ひとつは世間と比較してどうか、ということですが、ひと目高い。

 概ね東京都の大企業なみといったところ。

 この時点で大半の市民の感覚からいうと「高い」ということになりそうです。 結局はその部分はAの「仕事の成果に見合っているか」というところにかかっていると思われますが、さて職員の仕事の質はどうなんでしょうか。

給料が高いか低いかを論じるときの視点の一つとして、同一労働、同一賃金という考え方があります。

 言葉にすると難しいですが、要するに同じ仕事をしている人は同じ給料が支払われるべき。

  という考え方です。


 技能職員の給料を下げるネタで使われることも多いので同一労働同一賃金という考え方自体に対する批判もありますが、単に公務員というだけで給料が高いのは市民の納得を得るのは難しいのではないでしょうか。

 いずれにせよ、このような状況がある限り、民間委託への動きは止むことはないと思われます。

 「民間にすると質が保てない」というようなことが言われることがありますが、同じ仕事をしている民間の人に言わせれば「公務員の場合は質を上げなくても、客がいなくても、倒産しないので民間の方が仕事の質は高い。」というかも知れません。


 直営といっても職員だけで仕事をしているのではなく、給与月20万円でボーナスもない非常勤嘱託や臨時職員が協力して運営している(さらにいろいろな業者に委託して事業が成り立っている)ことも忘れてはいけないと思います。

 さて今回は民間に同じような業種がある技能職員の話でしたが、行政職員についてはまた次回とします。

 前のページは民間に同種の仕事があるものについてでしたが、行政職員についてはどう考えるのでしょうか。 行政職員の場合は国家公務員がその対象となります。その国家公務員の給与水準を100とした指数が以前に紹介したラスパイレス指数。これが110.6ということは国家公務員より約1割高いということ。ただしこの年度については国家公務員については7%の給与削減が行われているので、その影響でやや高くなっているところもありますが、都内の他の市と比べても高いことがわかります。

そもそも国家公務員は何と比べられているのでしょうか?

簡単に言うと民間企業を参考にしています。

 同一労働というのはないので、職種問わず全般の平均をみているということになっています。

 が、これについては「大企業だけを比較の対象としている」という批判があります。


 結局、国の公務員や大企業の社員と同じぐらいの給与をもらっていることに市民の納得が得られそうか、それに見合う仕事をしているかとうところに戻って来る気がします。

よく「小金井市は財政危機なのに人件費が高い・(以下略)・」というようなことが言われますが、財政危機と人件費はどうつながっているのか、調べた人はあまりいないようなので調べてみました。

小金井市が給料高いと言われる要因の2つ、ラスパイレス指数と経常収支比率における人件費割合、これを各々他市並みにしたらどうなるか。という観点で比較をしてみました。

 他の市との差のだいたい半分ぐらいは人件費で説明ができそうです。


 待機児童の割合も最悪、ゴミ問題もなかなか解決しない、市庁舎のために買った土地が20年以上塩漬けという中、小金井市の職員の給料が国の公務員の給与水準よりずっと高いという事実は市民の皆様に是非知っておいてほしいことと思います。

人件費の話題は人の財布にいきなり手を突っ込むような話なのでしにくいのですが、だからといって決してされないわけではなく、裏のほうでこそこそとされていることが多い。

 一方では「市民はなんでもお願いするくせに給料は下げろと言う」といった公務員側の立場、

 「楽していい思いしやがって」といったそれを批判する立場、いろいろな立場があるなかで似ているスタンスの人が情報交換・意見交換するなかでお互いがますます尖鋭化し、お互いの不満が溜まっていっている状況にあるように思います。

 まずは世の中で言説として何がいわれているのか、そのいわれていることは数字としてはどうなのか、を明らかにし、日に当てることが必要かと思っています。それで一時的にはそれを元に議論がわき、対立もあるのだろうと思いますが、データ無しでお互いの主張をぶつけあうよりは有益なのではと思います。

 内容についてはこれまで説明したことなのであえて解説は不要かと思います。

上のスライドでの○番めというのは多摩26市の中でということ。

 あと、今回取り上げられなかった人件費に関する論点もかなりあります。

 3月議会では再任用職員について議論になっていましたが、ここには上げられていません。


 この中には数字では捉えがたい(資料の入手可能性含め)ものもありますが、そのうちなんとか取り上げていきたいと思います。

最終ページでこれかい!っとツッコミを受けそうですが。

 でも別にちゃぶ台返しをしているわけではないです。


 要は限られた財源をいかに有効に使うかということを総合的に考えるべきということ。

 下の絵でいうと①と④の関係ということ。トータルでいうと①は決まっているので、④の成果をあげるためにはどうすべきか、その中での人件費のあり方が問われているということです。が、この話をここに書くには余白が狭すぎますが(フェルマーかというツッコミを期待)、このブログ全体を貫く一つのテーマともいえます。


 とりあえず財政の謎シリーズ「小金井迷宮伝~人件費編~」の解説はこれでおしまいです。

 ここまで読んでいただいた皆様ありがとうございました。