小金井市の財政はなぜ苦しいか

2013年7月に市役所の方を招いた勉強会「財政危機を考える」に出席しました。

その際になぜ小金井の財政が苦しいのかを聞けるかと思ったのですが、納得いく答えは得られませんでした。

なぜ小金井市の財政は苦しいのか?それに対して言われていることの検証を一つ一つしていきます。

データを中心に検証しており、マンガ版の「小金井迷宮伝」の元ネタとなっています。

なお、ブログでの掲載期間は2013年の9月から11月頃までなので、データとしては平成23年度のものが中心となっています。

なお、中の文章は基本的には掲載時のものを用いていますが、必要に応じ修正しています。

<小金井市の財政はなぜ苦しいのか~問題意識>

 (ブログ掲載13/9/13) なお初回以降は日時等は記載しません。

「小金井市の財政は苦しい。」「小金井市は財政危機。」とよく言われます。

 一方、一人あたりの個人市民税は全国7位、税収全体で見ても決して貧しいというわけではありません。では一体なぜ財政が苦しいのか?いつも不思議に思っているところです。


 この連載では、主に平成23年度のデータを使いながら、なぜ小金井市の財政が苦しいのか調べていきます。実は今の段階では明快な答えはありません。(市の財政の方もわからないぐらいでした。)

 最終的な答えが出ないかも知れませんが、少しでもデータを示しながら分析することで市の財政への理解が高まればと考えています。

そもそも、財政が苦しいとはどういうことを指すのでしょうか?

 いろいろな指標があり、説明を始めると長くなってしまうので結論からいうと小金井市の場合は

 経常収支比率が26市で最も悪い

 貯金がなくなってしまう

 という点で財政が厳しいということになっています。


<経常収支比率の比較>

 ところで、経常収支比率って何でしょう?

 経常収支比率とは「経常的な収入」に対する「経常的な支出」の割合のことです。

 (経常収支比率については長くなるので説明はこちら

 経常的とは臨時ではないことで、例えば交流センターの取得費は臨時的な費用になります。

 この割合が高ければ高いほど、やりくりが厳しい(臨時的な支出に回す余裕がない)ということになります。

 家計でいえば、食費とか家賃、水光熱費など毎年かかるお金の、給料(ボーナスを含む)に対する割合といえばわかりやすいでしょうか。

 小金井市の場合は、平成23年度は97.0で25位(ワーストは国分寺市)、そして平成24年度は99.0でついにワーストになってしまいました。

 一体なぜなのでしょう。


<リーマンショックや震災が原因なのか?>

 財政状況について説明する際に枕詞のように使われるのが「リーマン・ショックや東日本大震災以来の景気低迷により・・・」という言葉ですが、小金井市についていえば、リーマン・ショックの影響は他の市よりもむしろ少ないといえます。

 その理由は・・・

  ・リーマン・ショックの影響は主に法人の税収の減少となって現れている。

   (データ:全国の市町村では・・・

    法人住民税  平成19年度 3兆151億円

       → 23年度 2兆107億円(-33.3%)

    個人住民税  平成19年度 7兆2929億円

       → 23年度 6兆6876億円(-8.4%))

  ・小金井市の場合は税収のうち法人住民税の占める割合は3.8%と全国平均9.9%、

   多摩平均6.0%より低い。

  故に・・・

確かにリーマン・ショック後に税収は減少していますが、減少幅は14位で26市中ちょうど中間ぐらい。経常収支比率を最下位にするほどの影響はないものと思われます。

震災については、、説明する必要はないですよね。

<コラム>経常収支比率と市税収入の関係

下の図は平成23年度の日本の全ての市の経常収支比率と一人あたりの市税収入をプロットしたものです。

これをみてわかるのは、市税収入の多さと財政のやりくりの厳しさは関係がない。

 (有意な相関はない。)ということ。

 「小金井市は税収が多いのに やりくりが厳しい」のはなぜ?

 という疑問からスタートしているこの企画ですが、その大前提として、


 税収が多い→やりくりは厳しくない はず。


 という先入観があったのですが、実はその前提そのものが違っているようです。

 ということは、財政のやりくりの厳しさは何に関係するのだろう?

 歳入が関係ないということは、結局はお金の使い方の問題ということということになりそうです。

 が、これについては、頭に”?(はてなマーク)”をつけた状態で今後分析を進めていくことになると思います。 

<生活保護が多いからか?>

小金井市の財政が苦しい理由として「小金井市は国分寺市とかに比べて生活保護が多くて財政が苦しい」

 という説明を聞いたことがあります。

 確かに、生活保護費・保護者数の推移を見ると平成20年度以降さらに増加し、財政的な負担も増していることが想像できます。

一方、生活保護者数の割合や市民一人あたりの生活保護費をみると決して高いわけではありません。

というか、むしろ低い方です。

 生活保護者数の割合は1.2%で低い方から5番目(ちなみに26市の平均は1.6%)、一人あたりも低い方から7番目です。比較の対象としている国分寺市が他の市に比べて生活保護者が少ないというのが実態なので、比較の対象の選び方が恣意的では?という気もします。


 ゲストハウスの問題もあり、保護対象が増加していることは確か(平成21年度は低い方から2番めだった・・)ですが、生活保護が原因で26市で一番やりくりが厳しくなっているわけではないと思います。


 ところで保護者一人あたりの生活保護費。狛江市・調布市に続いて3番目となっています。

 原因はわかりませんが、ちょっと気になるところです。

<福祉が手厚いから財政が苦しいのか?>

先日の小金井市の出前講座で経常収支比率が高いことについて「小金井市は他の市より福祉が手厚い。例えば同じ事業でも他の市より支給額が多かったり、負担額が少ないものがある。」との話があったので、検証してみます。

平成23年度の民生費の比較です。市民一人あたりの民生費は26市のうち最下位。

 生活保護費については、法律で決まっている部分が多く、市の福祉の手厚さとはあまり関係がないと考えて、生活保護費以外の民生費の比較してみましたが、やっぱり最下位。

 ならば、民生費にあてている一般財源で比較をしてみます。

 例えば国や都の基準より福祉を手厚くしたり、利用者負担を少なくするとその分一般財源を使うこととなります。がこれで比較しても下から3番目の24位。

もう一段細かい分類でみてみます。

下のグラフで示すように社会福祉費(生活保護、高齢者福祉、児童福祉費以外の福祉の費用。障害者福祉や国民健康保険などを含むと思われます。)は25位(下から2番め)。高齢者福祉は18位。

児童福祉費は25位(下から2番め)となっています。

 ということで、ピンポイントで他の市がやっていない事業や補助が手厚い部分はあるのかも知れませんが、総体的に見ると多摩の中では福祉は手薄いのではないかと思われます。

 (福祉に対するニーズが各市で大きく違わないという前提で。)

むしろ、他のことに使ってしまって福祉に充てるお金がない

 というのが本当のところで、その一方でさらに高齢化するなかで将来的には民生費が増えていることは容易に想像されるので、財政のやりくりが厳しくなるという状況なのだと思われます。

 ところで他のことってなんなんでしょう。

<人件費が高いのが原因か?>

その一つとして言われているのが人件費です。

小金井市が人件費が高いと言われる理由は2つ。


 一つは給与水準が高いこと。

 もう一つは歳出(歳入?)のうちに人件費が占める割合が高いこと。

 給与水準についてはラスパイレス指数という指標があり、これが高いほど給与水準が高いということになります。

  小金井市は平成23年度103.4で一位(つまり給与水準が一番高い)

   下のグラフは平成24年度で110.6で3位ぐらい。

経常収支比率(人件費)は、一般財源のうちどれぐらいが人件費に充てられているかを示すもの。小金井市は30.3%でこれも26市中一位。


 ちなみに経常収支比率で人件費以外のものは66.7%で26市中12位。人件費を除くと中位ぐらいなので、人件費が経常収支比率を押し上げている大きな要因となっていることはいえそうです。


 まとめていうと

  ・職員一人ひとりの給与水準が高く

  ・歳入(一般財源)の割に人件費が多い ということになります。

人件費についてさらに細かく分析していきます。

経常収支比率(人件費)は、一般財源が充てられている人件費÷経常一般財源で計算されますが、

  それを因数分解してみると

  ①市民一人あたりの人件費(人件費/人件費)

  ②市民一人あたりの一般財源(一般財源総額/人件費)

   ①を更に分解すると

    ①-1職員一人あたりの人件費(人件費/職員数)

    ①-2職員一人あたりの人口の逆数(職員数/人口)となります。

 ということになります。

 まず①から見て行きましょう。

一番左のグラフは市民一人あたりの経常一般財源等を充てた人件費

  市民一人あたり53千円。26市のうち11番めに多くなっています。

  一般財源を充てたモノ以外を含む人件費を表したグラフが真ん中。

  一人あたり62千円で、これも26市のうち11番め。


 人件費には議員報酬や各種委員会の委員への報酬を含むので、職員給で比較したものが右のグラフ。

 ただし、退職金を含んでいない・・・。

  一人あたりの職員給は37千円、26市のうち10番目です。

  (ちなみに小金井市を超えているのは立川、武蔵野市、武蔵野市、昭島市、国分寺市、国立市、福生市、多摩市、羽村市)

 確かに高い水準かも知れませんが、トップレベルではないようです。


 次に職員一人あたりの人件費をみてみます。

グラフの単位は百万円、右のグラフは退職金や共済費などを含んだ人件費で経常一般財源が充てられているもの。

 左のグラフは職員給与(経常一般財源以外の財源も充てられている)

 小金井市は人件費全体では978万円(26市中18位)、職員給は650万円(26市中19位)。

  ラスパイレス指数が1位の割に少ないという印象があります。

 本当のところはわかりませんが、年齢層の高い職員がここ数年大量に退職して平均年齢が若くなったことがあるのかもしれません。


 次に、職員一人あたりの人口を見てみます。

職員一人あたりの人口は174人、少ない方が職員数が多いということなので、多い方から5番目。技能職員を除く職員一人あたりの人口は195人で、これは多い方から7番目。

 職員数が多いという要因も、人件費が多い原因としてありそうです。

次に市民一人あたりの一般財源等の比較です。

左側が経常収支比率の分母となる経常一般財源です。

 実は臨時財政対策債という名前の借金を含んでいます。

 臨時財政対策債を発行する(要は借金をする)かどうかはその市に任せられているので、臨時財政対策債を含まない本来の経常一般財源を右に示します。

 市民一人あたりの経常一般財源(臨時財政対策債含み)は17.6万円で26市中24位

      同じく臨時財政対策債を含まないものは16.9万円で26市中15位

 特に対策債含んだものはかなりの下位です。

 なぜ税収は少なくないのに経常一般財源等が少ないのか? これは大きな謎です。

さて、一人あたりの人件費と経常一般財源等をプロットしてみたものが上の図です。

 26市のうち一人あたりの財源が飛び抜けている武蔵野市は除いています。(グラフのはるか右にいます。)

 上にプロットされているほど人件費が高く、右にプロットされているほど一般財源が多くあることを示します。

 ごく簡単にいうと、

  小金井市はもっている財源の割に人件費が高い

 ということになります。

 今後の分析課題として

  人件費の高さの原因(人事制度を調べる必要があり、ここで調べるのは難しいが)

  一般財源等の低さの原因

 が見えてきました。

<ごみ処理にお金がかかっていることが原因か?>

小金井市の財政が苦しい理由として考えられるのが「ごみ処理にお金がかかっているから。」


 ごみ処理のお金は衛生費の中の清掃費というものに分類されます。

 市町村別決算状況調から一人あたりの清掃費を計算したものを比較したのが以下。

一人あたりの清掃費は多摩26市でトップ(良い意味ではなく)

 ただし、経常収支比率に反映されるのは一般財源でかつ経常的に使われるものに限るので、”清掃費が多い”というのが”それ故に経常収支比率が悪くなっている”ということには直接的にはつながりません。


 上記の数字から清掃工場の建設費用等の投資的経費やごみ処理の手数料を引けば良いのでしょうが、残念ながら統計上からは読むとることができません。

 (ちなみに都や国の補助は通常のごみ処理の経費に対してはありません。)


 が、二枚橋の解体費及びごみ処理の手数料を引いても一人あたり2万1千円で平均より多くなっており、他の市と比較して経常収支比率を悪くしている要因となっているということはいえそうです。それだけでも経常収支比率を2.2押し上げる(順位的には6~7位分ぐらい下げる)こととなっています。

今回は清掃費をもう少し細かく見ていきます。

  清掃費からもう一段踏み込んだ分析をするには決算書(明細書)が必要なので、今回は比較の対象が少なくなっています。まずはグラフから。

決算書の項目は各市で若干異なるのですが(八王子と東村山は決算説明書)、大雑把に上のようにまとめました。

 ・最終処分にかかる費用:焼却灰の処分など ほぼ東京たま広域資源循環組合の負担金

 ・ごみ処理 : 可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみの処理に要する費用

 ・収集運搬 : 可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみの収集運搬に要する費用(小金井はプラスチックごみ含む)

 ・リサイクル: 資源物の収集運搬、処理にかかる費用

 ・有料化等 : 指定ごみ袋の製造、配布、手数料収受などに関する費用

 ~ 実はこれで全てではありません。人件費やごみ減量啓発、二枚橋の解体費用などは含まれていません。


 グラフを見ると、羽村市が意外と一人あたり高いことに気が付きます。

 少しグラフの種類を変えてみます。

 このグラフから見えるのは 

 ・有料化の費用は違いはある(339~771円まで幅)が全体からすると影響は大きくない。

 ・小金井市はリサイクルの費用が高い。

 ・収集運搬は青梅市、羽村市が高い。小金井市はそれについで高い。

 ・ごみ処理費用は羽村市、狛江市についで高い。

  狛江市は多摩川衛生組合、羽村市は西多摩衛生組合に処理を委託しています。

  自前で焼却施設などを持っている場合には本来であれば費用として減価償却費を計上すべきところなので、単純に比較することはできません。

  が、青梅市も西多摩衛生組合に処理を委託、西東京市も柳泉園衛生組合に処理を委託しているので、その中でなぜこのような差がでるのかまでは分析できていません。

 ・最終処分は小金井は普通ぐらい。


今度は量あたりの経費を分析します。

すべてtあたりですが

 ・有料化と収集運搬は分母が資源物以外の収集量

 ・リサイクルは資源物の処理量

 ・ごみ処理・最終処分は資源物以外の処理量が分母になっています。


 量で見てもやっぱり小金井市のリサイクルの費用は高い。

 収集運搬費用も高い。人口密度が高いので普通より低くても良さそうなものだが。

 八王子市は直営で収集している部分があり、人件費が乗っていない可能性があると思う。


 小金井市の清掃費が高いのは、ごみ処理の施設がなく特例的に他の自治体に処理してもらっているからと言われている。確かにそれは正しい。特例的に処理するのだからそれだけ費用がかかるのはやむを得ないという面もある。

 が、リサイクル費用や収集運搬など必ずしもやむを得ないとは言えないものも多々あるのではないか?

 とにかく仕方がないと思わず、細かく分析して改善するところはしないといけないだろう。

<借金の返済が多いから財政が苦しいのか?>

小金井市の財政が厳しいのは公債費が多いから。という声があったので検証してみます。

左のグラフは経常的な一般財源のうちどれぐらいを公債費つまり借金の返済に充てているかを表しているもの。

右のグラフは市民一人あたりどれぐらい借金の返済に使っているかを表しているものです。


 小金井市はそれぞれ10位と12位、平均(単純平均)をやや上回るぐらいで、それが他の市よりも財政が悪くなっている原因とまでいえるのか?と思います。

 一方ちょっと気になるデータがあります。

一人あたりの市債残高は平成23年度末で26.3万円と26市中4位。

 借金の返済は12位なのに残高は4位ってちょっと不思議?

 その原因としては最近の借金が多いことが考えられます。

 市の場合はお金を借りてもすぐに元金を返し始めるのではなく、3年ぐらい置いてから返しはじめるからです。 (その間も金利は支払っている)

 交流センターの取得費のうち27.9億円は借金ですが、平成24年まではまだ元本を返していません。今後その返済も上乗せされると考えられ、今後は「公債費が多いので市の財政が苦しい」という状況になるのかもしれません。

 大規模事業による今後の借金の返済についてはこちらの記事(財政ウォッチャー)もご参考に。


 もう一つ気になるのは借金は減っている市と増えている市があること。

 何が原因なのか、市政の運営の問題なのか、気になるところですが、どう分析したものか、よくわかりません。

<一般財源について考える>

 人件費の解説のこの画像を覚えているでしょうか。

一人あたりの人件費と経常一般財源(臨時ではない一般財源)をプロットしたものです。

一人あたりの経常一般財源を見ると小金井市は低い方から4~5番目になっています。

 あれ? 個人の住民税は高い方から5番目、税収全体で見ても11番目なのに。

  なんで一般財源全体で見ると少ないのか?というのはすぐにわからないので、まずは状況の理解から。

 青色は市税のうち一般財源(市税のうち都市計画税を除いたもの)

 赤色は各種交付金(利子割交付金、配当割交付金など)

 緑色は地方交付税(特別地方交付税を除く)

 紫色はその他の一般財源です。

 武蔵野市が飛び抜けています。次が立川市、そして福生市。

 ちょっと差が見えにくいので100~200の間を拡大します。

最後に水色が加わっていますが、これは臨時財政対策債です。

 赤色は市によって大きな差がありません。

 差があるのは青色と緑色、青色の長さと緑色の長さは概ね反比例の関係にあるといえまず。小金井市は青色はそこそこ多いものの、緑色で他の多く市に抜かれていることになります。

 ちなみに青では小金井は11位、青+赤でも11位、青+赤+緑になると一気に22位・・・。

 その他を加えて21位。臨時財政対策債を加えると24位にと順位が下がっていきます。


地方交付税は(基準財政需要額-基準財政収入額)です。

 基準財政収入額は概ね上記の図の青色の75%に赤色を足したもの。

  なので、地方交付税の額は基準財政需要額の多さが関係しています。


  市民一人あたりの基準財政需要額を比較すると。。。

単位は千円。 

小金井市は一人あたり126千円、26市中24位。ちなみに全国787市のうち725位と全国で見ても下位。

 地方財政のヒミツ(小西砂千夫著)によると標準財政規模の方が「通常の行政活動を行う上で必要な金額」を表している(武蔵野市のように極端に市税が多い市は別)らしいので、標準財政規模も比較してみた。

 単位は千円

  小金井市は181千円で26位で最下位。全国でも723位。

  つまり、小金井市は一人あたりの財政需要がそれほど多くない、つまり市政の運営に要する経費が少ないと国からはみられているということ。


  財政のやりくりが厳しいのは

   ・本来一般財源がそれほど必要ないはずなのに、使い方に無駄があるから

     なのか

   ・制度上小金井市が不利な立場に置かれているため交付税が少ないから

     なのか

  気になるところです。

<財政需要が少なく見積もられているので財政が苦しいのか?>

地方交付税の話を少しします。

 地方交付税については、マンガ版での説明資料「女王様と萌え萌え三姉妹」に詳しいです。

 マンガですが歯ごたえありますので、読む場合はじっくり読んでいただければ。

 自分でいうのもなんですが、よくできてます。 宣伝はこれぐらいにして。

 萌え萌え三姉妹からの一コマ。

 基本的な地方交付税は「地方公共団体間の財源の不均衡を調整」し「一定の行政水準を維持する財源を保障する」ことが目的とされています。

 そのために、行政水準を維持するのに保障すべき財源の量(より正確には一般財源として必要な財源の量)を「基準財政需要額」として「国が定めます。」

 その定め方は地方交付税法、普通交付税に関する省令などで定められています。(毎年変わります。)

 基準財政収入額(一般財源の収入の見込み)が基準財政需要額(一般財源として必要な金額)に満たない場合には不足分が地方交付税として交付されます。

 

 実際には基準財政収入額が基準財政需要額を上回る自治体はごく一部なので、その市が確保できる一般財源の量は国が定める基準財政需要額に大きく影響されます。

 市税の25%は基準財政収入額に入らないので、市税収入が大きいほど一般財源の量も多くなります。


 さて、小金井市の地方交付税を含めた一般財源は多摩26市でも下位。

 小金井市よりも税収が少ない市よりも一般財源が少ないということは、

 「本来税収が多くて他の市よりも一般財源が多くてしかるべきところが、基準財政需要額が少なく算定されているため一般財源が少なくなっている」ということになります。


 では、国が定めた基準財政需要額が少ないため、一般財源が少なく、それが故に小金井市は財政が苦しいのでしょうか?

 それを確かめるため、全国の市の基準財政需要額を調べてみました。

上のグラフは一人あたりの基準財政需要額の分布。横軸はそれぞれの自治体の人口を示しています。

 小金井市は11万人で一人あたりの基準財政需要額は135千円。

 プロットされている点の中では赤の○で囲ったあたりに位置します。

 人口が概ね20~30万人ぐらいまでは一人あたりの基準財政需要額は低くなる傾向にあります。

 人口10万人前後のところは一人あたりの基準財政需要額がどちらかといえば低いゾーンですが、高い自治体もあります。


 さて、本題は2番めのグラフ。基準財政需要額が低くて財政が苦しいというのであれば、基準財政需要額と経常収支比率との間になんらかの相関があるのではないかと考えられます。

 がグラフをみての通り相関があるとはいえないようです。(R2は0.01ぐらい) 

 ということは、やっぱり「本来はそれほどの財源を必要としないはずなのに、財政運営のまずさから財政が苦しくなっている」ということになるのではないでしょうか?

<市庁舎の賃料が高いから財政が苦しいのか?>

小金井市の財政が苦しい理由としてあげられることがあるのが、市庁舎の賃料が高いから。

ということ。


 今日は決算書・予算書や施設白書などから庁舎の維持管理費と床面積がわかる多摩の市町村と比較してみた。

 面積の割にお金がかかっているというか、3倍以上の広さを持つ府中市や八王子市よりもお金がかかっている。

  市庁舎の面積は第一第二西庁舎を合わせて約9700㎡。

 ところで、他の市は自前の庁舎を持っているので、庁舎を建設した際に借りたお金がある場合にはその借金は公債費に計上されています。本来は公債費の返済額か減価償却費を計上すべきですが、わからないためとりあえず現金で出ている分のみ考えます。

 とはいえ、仮に6000㎡の第二庁舎(賃借)の建設費が㎡35万円だったとしても21億円、仮に全部借金で払ったとして年間の元本の支払いは30年返済で7千万円。仮に7千万円引いてもやっぱり一番高い。

 おそらく他の市とくらべてざっくり2億円ぐらい余計にかかっているという感じはします。しかも平成23年度までは市庁舎の用地(取得してから20年経って未だに空き地)の年賦払いが3億円以上もあったので・・・・・・・。←これは計上されていない!


 2億円といえば経常一般財源の1%ぐらい、すなわち経常収支比率を1あげる程度ですが、こういう無駄なことは市庁舎に限らないと思われるので、そういったものが合わさって小金井市の財政を苦しくしているような気がします。

 

ちなみにデータの出処は以下

出典:八王子市 面積:八王子市HP(工事の案内)、費用:平成23年度決算説明資料

   武蔵野市 面積:公共施設白書 費用:平成25年度予算書

   青梅市  面積:小金井市資料(庁舎建設関係) 費用:平成23年度決算書

   日野市  面積:小金井市財政白書H22 費用:平成23年度決算書

   国立市  面積:公共施設白書 費用:平成25年度予算書(工事請負費除く)

   東村山市 面積:公共施設白書 費用:平成25年度予算書(工事請負費除く)

   多摩市  面積:公共施設白書 費用:公共施設白書