<2015年11月23日~26日掲載>

小金井市は財政危機か

今回の市長選の候補者のうち3候補者が重み付けの違いこそあれ、財政健全化を訴えています。一方で本当に財政危機か?という声もあります。

 今回はその点を探っていきます。

左に書いてあることもわからないではないけど、なんか難しくて、実感ないかな。

そもそも黒字なのか。毎年お金が余っているということ?」

「2010年から5年分の歳入と歳出(普通会計)を並べてみた。」

「全部黒字じゃないか。毎年10億円以上余っているのか。」

「実は自治体財政の黒字と企業会計の黒字はぜんぜん違うものなんだ。

 歳入には実は昨年からの繰越金も入っている。」

 ということは例えば2013年の歳入には前年からの繰越(379億-365億=14億円)

 も含まれている・・・・。」

 さらに言うと、借金をしても歳入だし、貯金を下ろしても歳入になる。

 家計に例えると歳入と歳出を引いたものは年末に財布に残っているお金。」

「財布に残っているお金ってマイナスにならないから赤字ってありえないのでは?」

「そう。ありえない。でも歳入が歳出を上回っていることをみて

 『市はお金が十何億円も余っているからもっと使うべき』なんていう議員がいたり

 するからびっくり。」

「でもこれじゃ歳入と歳出だけみても何もわからないんじゃ。。」

「なので実質単年度収支という指標が用意されている。実は2010年度から2013年度

 までは赤字。2014年度は黒字。」

「赤字だと財政危機?」

「これがまた、赤字だからといってダメというわけじゃないんだけど、ずっと続くようだと

 問題。」

「うーん。結局財政危機なのかどうかわから~んのだが。」

「実は財政は危機ではなく、歳出削減の口実に使われているという話も聞いたことが

 あるぞ。」

「昨年度ぐらいはお金のやりくりが厳しくて、何十万というレベルのものでも減らして

 いたという話も聞く。一方、再開発に15億出すことを決めたり、確かにちぐはぐ

 と思われても仕方がない。がすぐに陰謀論に走るのは乱暴。」

「財政危機というけど、特に困ってないから実感ないなぁ。」

「実は困っている人はいる。待機児童の問題とか、障害者福祉の問題で個別に話は聞く。

 市内の施設だけをみてるとわからないけど図書館とかが他の市と比べるとひどくしょ

 ぼい。小金井に寝に帰っているだけのサラリーマンには実感する場面はあまりないだろ

 うが。」

「でも夕張みたいなひどいことにはなっていないよな。財政危機というのはちょっと大げさ

 では?」

「夕張は財政危機ではなく財政破綻だ。じゃあどこからを財政危機というのかは主観が入

 る。ところで家計の財政危機というとどういう状況かな?」

「うーん。収入より支出が多くて赤字とか。ローンや教育費で生活費に余裕がないとか。

 かな。」

「例えば小遣いが月に1万減らされて、飲みにいけるのは月1回までとなると。」

「それは財政危機だ!」

「でも借金が払えなくて借金取りに追い回されているわけじゃなく、毎月の収支も

 一応合っているから傍目にみれば普通の生活。」

「収支があってるっていったって、それは私の小遣いの犠牲の元に成り立っている

 のであって、やっぱりそれは財政危機だ。うん。」

「じゃあ例えば、ローンは払い終わってるけど家はボロボロでリニューアルを大々的にやら

 なければなりません。子どもは大学に進学してお金が係る予定です。おじいさんもそろ

 そろ危なくなって介護が必要になってきます。というような状態で、貯金は一銭もあり

 ません。でも月々の収支はあっています。ちゃんと毎週飲みにいけます。というのは?」

「貯金0はまずいでしょ。家計の将来に対して無責任な気が・・・。」

「でも毎週飲みにいけるよ。」

「いや貯金をしないと、そのうち全く飲みにいけなくなるか。雨漏りしても修理できないと

 か、子どもが進学を諦めるとかいう話に・・・・。」

「まさに小金井市の状況がそれだ。確かに一見何も問題がないようにみるがやりくりが厳し

 くて子どもの福祉とか一部が圧迫されている。」

「私の小遣いのようなものだな。」

「一方で、今後税収は増えるかというと大きくは増えない。高齢化がより進み歳出の方は

 増えていく。」

「このままでは更にいろいろなところが圧迫されるわけだな。」

「さらに公共施設白書にもあるけど小学校中学校も10年経つと過半が築60年

 を迎えてしまう。段階の世代も後期高齢者になってよりお金がかかる。」

「さっきの家のリニューアルの話だな。」

「実はこれらの公共施設を建て替えるための貯金はゼロ。自由に使える貯金も

  多摩26市で最低レベル。」

「さっきの貯金0の話か・・・・。確かにいろいろ冷静に見ていくと今後は大変

 そうだな。でもやっぱり実感がないのはなんでだろう。」

「一つは君が幸運にも圧迫されているところにいないというだけの話。

 あと、今なんとかなっているからいいだろうみたいな思考停止。

 小金井は仮住まいだから、あまり関係ないみたいな無関心。」

「厳しいな、カエル先生。」

「将来のことまで自分のこととして捉えなければ、自分が圧迫されるまで大変だとは思わ

 ないのかもしれない。でも市のトップに立つべきものとしては当然危機感が必要じゃ

 ないかな。」

「確かに、将来お金がかかることがわかっていても貯金もなく、平然と飲みに行っている

 ようじゃ家長として失格だな。」

「現状と将来が把握できてなかったら論外なのだ。」 

「この前の話で、小金井の財政が苦しいのはだいたいわかったけど。じゃあ、どうすれば

 よいんだろう。」

「何をすべきかは難しい。今から始めないといけないことは確実。」

「確かに、貯金0で、子どもの進学や家はボロボロというのがわかっていれば、今から貯金

 を始めるのは家計を司るものの義務だな。」

「税収が大きく増えることは期待薄。とすると歳出を削るか、歳出の伸びを押さえるか」

「うっ、やっぱり飲み会を減らさないといけないのか!」

「なんでそう飲み会に結びつけるかな!!」

「すんまへん。」

「自分に関係する歳出を減らされるのは嫌、負担はしたくない。財政錯覚もあって

 歳出が増える方の圧力は常にある。歳出削減は大変。」

「ありがちなのは、外の誰かに負担を求める主張。例えば国が全部やれとか、企業は金が

 あるから出させろとかいう類のもの。そしてそれができなければそいつのせいにすると

 いうやつ。」

「『世情』だな。」

「あとはスケープゴートを求めて、それを諸悪の根源とする主張。生活保護とかを

 目の敵にすれば関係のない人はほっとする。そして諸悪の根源が根絶できない

 から、そいつが悪いいうやつ。」

「でも、そういってそれぞれ自分のところだけは守ろうとしていては、歳出は減らせな

 いし。。」

「財政の健全化はダイエットに似ている。例えばりんごとかばっかり食べれば痩せる

 とか、米さえ食べなければ痩せるというような、特定の魔法の杖に頼ろうとしたり

 特定の悪玉を目の敵にする方法はいっぱいあるけど、だいたいうまくいかない。」

「うっ。厳しい。外の誰かという魔法の杖やスケープゴートを求めても効果は薄いか」

「当たり前のことだが、急に絶食してもリバウンドするか体を壊す。計画的に進めなけ

 ればならない。特に小金井市は無計画でPDCAが回っていない。まずは事業の点検から

 始める必要。あと、財政健全化に向けた条例等仕組みづくりも必要。」

「地味だな。」

「確かに一刀両断するのは気持ちいいし、切られる先が自分に関係なければなおの

 こと。選挙戦での各候補者の主張は気をつけて聞こう。」

「とは言っても、要は歳出を削減するんだろう?結局はサービスの低下をどこが

 負担するかということなのか。気が重い話だなぁ。」

<2017年3月20日追記>

 平成29年度の予算説明会資料では毎年1ページある「危機的財政状況」の資料・フレーズがなくなっています。小金井市は財政危機ではなくなったのでしょうか?

 そもそも財政危機かどうかという点でも議論があります。

 

 もともと小金井市が財政状況が苦しいと言われていた理由は

 ①経常収支比率が高い(自由に使えるお金が少ない)

 ②財政調整基金が少ない(貯金が少ない)

 の2点に大きく絞られるかと思います。

 小金井市は経常収支比率が平成24、25年度ぐらいは26市でワーストでした。

 しかし、最近の統計だと15位(臨時財政対策債を入れないと10位)まで上がってきています。

 

26市中最下位であった平成24年度との比較では、ざっくりいうと歳入の増加によるものが8.1、歳出減によるものが0.1なので、収入が増えたことにより、改善したことがわかります。

 そのうち地方消費税交付金が大半を占めています。消費税が増税となったことにより地方消費税が1.0%から1.7%に増え、その分市への配分も増えたというわけ。各種交付金は配当所得や株式譲渡所得に対する市税分の増加によるもの。

 歳出については扶助費が増えた分を人件費の減で相殺している感じ。人件費の減は退職金が減った分が大きいようです。

 まとめていうと、改善要因としては増税によるものと景気上向きによる歳入増という外部要因が大きいと言えそうです。

 その意味では制度的な変更と税収増で一息ついた状態といえるでしょう。

 

 それでは将来的にはどうなのでしょうか?

 長期的に見ると税収の伸びは見込めず、歳出は福祉や公共施設更新の費用の増大が見込まれており、予断は許しません。一時的な指標の改善に安心せず財政健全化の取り組みは地道に進めていかないといけないのです。

<おまけ>経常収支比率の意味

 小金井市の財政が苦しいという根拠の一つとして「経常収支比率が高いこと」があげられていますが、経常収支比率の持つ意味はなんでしょうか?

 よく言われるのが「経常収支比率が高くなると財政が硬直化し『投資的な費用や新しいサービスに使えなくなる』」

 とか『市の裁量で使えるお金が少なくなる』ということですが、

 実は、市の裁量で独自のサービスをすれば、そのサービスが臨時的なものでなければ分子に含まれることになります。

 つまり、経常収支比率が高い場合

 「財源が少なくて独自のサービスがなくても余裕がない」

   のか

 「財源はあるが独自のサービスをしているので余裕がない」

   のか

 「財源はあるが無駄が多いので余裕がない」 

   のかは判断することはできません。

 わかるのは余裕がないこと。

 それでは経常収支比率はどのような意味を持つのでしょうか?

私なりに解釈したのが、緑の文字です。

 経常一般財源等を多くを占めるのは市税(地方交付税というところもあるかも)、長期的に見ればどんどん右上がりで増えていくということはあまり望めません。

 

 一方分子の方は、高齢社会がさらに進むことで何もしなくてもどんどん増えていきます。

 つまり短期的には一時的によくなることがあっても、長期的には経常収支比率は悪化する方向になります。

 そういった中で経常収支比率が100%に近づくほど何か経常的なサービスを減らさなければならなくなることを意味します。

 

 つまり経常収支比率は

 

 「経常的に支出する経費を減らすべき緊急度」

 

 と解釈すべきと思います。