2014年3月頭に投稿した予算書を読もうのマンガ版 この後でまじめな(?)予算の解説です。
予算書とかいわれてもなかなかわからない!という方のために簡単な解説漫画を作ってみました。
簡単なのは解説で、これを読んだからといって予算書が急にわかるようになるわけではありません。
ルールがわかっても将棋らしく指すのには練習が必要になるのと同じようなものです。
といってもすごく難しいわけではなく、ちょっとだけ粘り強さが必要なだけです。
まずは予算説明書(平成26年度はこちら)の方から読んでみてはどうでしょうか。
しかも1ページから読んでいくと眠くなるので後半から読んだほうがよいかも。
まずは概要を整理し、特徴を分析します。
一般会計の歳出(目的別)から。
目的別歳出は要するに何にお金を使っているか。ということ。
重要なのは長期的な動向と近年の動向両方を押さえること。
☆長期的傾向
グラフで明らかな通り、民生費が大幅に伸びてきている。平成元年から平成26年の間に歳出が約100億円伸びているが、民生費の伸びとほぼ同額である。
なお、このグラフは平成26年度の歳出の多い方から準に下から並べている。
衛生費は目的別歳出で2番めに多くなった。おそらく2番めになったのは初めてではないだろうか。
これも長期的にみれば増加する傾向にある。その原因は主に清掃費で可燃ごみの委託費用が多くなっているため。
次に多いのが教育費だが、長期的には減少の傾向にあるようだ。
総務費は年々の増減が激しいが、これは平成4年の市役所用地(?)購入と平成23年度の交流センターの購入が目立つため。
全般的には減少の傾向。
土木費は歳出が多い時期(60億円前後以上の時期)と少ない時期(40~50億円ぐらい)が現れるようで、平成24年度ぐらい前から少ない時期に差し掛かっているようです。
公債費は徐々に増え、これも平成元年の2倍ぐらいになっています。
消防費はほとんど変動はありませんが、徐々に増えてきています。
☆ここ3年の比較(金額)
平成24年度から平成26年度を比較しました。平成24年度は決算で他は予算です。
平成26年度を25年度と比較すると公債費以外のほとんどの項目で金額が減少しており、予算説明でもあるとおり緊縮型の予算であることが見て取れます。
☆ここ3年の比較(比率)
改めて割合で見ると、民生費は金額では減っているものの他のものが減った関係で相対的に割合は多くなっており、平成26年度は45%を占めています。
次に特別会計を含めた歳出です。
☆長期的なトレンド
特別会計は平成に入ってからいくつかの変動がありました。
平成12年に介護保険特別会計ができ、平成20年に市町村単位の老人保健制度から都道府県単位の後期高齢者医療制度に変わり、それにつれて特別会計も変わりました。
また受託水道の特別会計も平成24年度に廃止されました。(金額があまり大きくないので、上野グラフからは省略しました。)
全般的に財政規模は大きくなっています。
平成元年を基準とすると一般会計は約1.4倍、国民健康保険は3倍、下水道は0.7倍になっています。
10年前を基準としても一般会計は+6%、国民健康保険は+47%、介護保険は+70%となっています。
全般的に社会保険関係の歳出の伸びが増えていることがわります。
老人保健から後期高齢者医療になり、歳出が減っていますが、これは医療費の支払いが市の特別会計から都道府県単位の広域連合からに変わったため。後期高齢者医療では市の分担部分の費用しか反映されないため金額が少なく見えますが、以前と同じ仕組みであれば100億円以上の歳出になったと予想されます。(市の負担は支払いのだいたい1/5ぐらいなので。)
☆ここ3年の比較
近年の状況で比較すると、一般会計は平成26年度で歳出が約20億円減っていますが、国民健康保険、介護保険などの特別会計の支出は増えてきています。
次は歳入について
☆長期的な傾向
市税はここ7~8年200億円ぐらいで変わりません。
交付金は、利子割交付金、地方交付税交付金など国からの交付金で使途に制限がないもの。
平成11~13年は地方交付税が10億円以上あったため多くなっています。
手数料等とは負担金・分担金・手数料・使用料、ごみの有料化後増ています。
国や都の支出金は増加傾向、国の増加が大きくなっています。
☆近年の比較
歳入面で見ると最も減ったのは市債。
ここから借金(市債)をして行うような建設事業が減っていること。
増えたのは交付金
これは配当や株式譲渡に係る税金が増えたことによるものと消費税の増税によるもの。
消費税の税率は4月1日から4%から6.3%になります。
えっ、5%から8%じゃないのかと。
実は法律では消費税は4%となっており、地方消費税が消費税の25%と定められています。ので
現在は消費税4%+地方消費税1%で5%、4月1日からは消費税6.3%+地方消費税1.7%で8%というわけ。
平成25年予算の11.2億円から平成26年度予算では14.3億円になっています。1.7倍になっていないのはなぜかはわかりません。
性質別歳出
☆長期的な動向
性質別歳出は歳出をその手段で分類したものです。
長期的には人件費が減少、その他は増加傾向にあることがみてとれます。
普通建設費は年による変動が大きくなっています。建設費というと建物というイメージがありますが、要は投資的な経費のことで土地や道路や下水などのインフラも含みます。
☆近年の比較
ここ3年の比較でいうと一貫して増えているのは物件費、物件費のほとんどは委託費です。
繰出金も増えています。これは特別会計への繰出金で、増加の原因は社会保険関係の特別会計の支出が増えていること。
さて、財政危機と言われる小金井市、どのように予算をやりくりしているのかを、各種資料の分析により推理していきます。
ここからは一般財源の視点から予算のやりくりを分析します。
一般財源とは使途が特定されていない財源のことです。
一般財源の内訳(明記されているわけではなく個人的に分析したもの)は
197.79億円(83.2%)が市税
24.01億円(10.1%)が地方譲与税と国からの交付金*1
7.6億円(3.2%)が繰越金及び財政調整基金からの繰入
5.9億円(2.5%)が臨時財政対策債
2.3億円(1.0%)が雑収入 (わからない部分が0.08%)
ということでほとんどが市民からの税金ということになります。
ちなみに減っている財源は
地方債マイナス19.6億円 その他2.9億円
地方債が減っているということは投資的な経費が減っているということ
投資的経費の財源は国・都+地方債+一般財源という構成になるので、投資的経費を減らすと地方債と一般財源が減ることとなります。 前年度と比べて一般財源が減っていないということは投資的経費以外で一般財源を必要とするものが増えたため、投資を押さえて対応していることになっているものと思われます。
一般財源の増減を目的別に見ると
となっており、民生費の一般財源が増えています。とはいえ一般財源は増えないのでその分他の目的別の項目で減らしていることがわかります。
ちなみに民生費は主に社会福祉費、児童福祉費、生活保護費に分けられますが、
そのうち社会福祉費で1.1億円、児童福祉費で1.2億円、生活保護費で0.1億円増えています。
社会福祉費の増加の主なものは、介護保険特別会計への繰出金の増加8500万円、社会福祉総務費の人件費で約2200万円、障害者福祉費関係で1700万円ぐらい、後期高齢者医療の特別会計への繰出で1100万円ぐらい。
ちなみに生活保護費の一般財源が0.1億円しか増えていないのは見通しが甘いように思います。
平成20~24年決算では年間2~3億円伸びていること(一般財源ベースだと0.5~0.75億円ぐらい)平成25年予算では前年+3.2億円の予算を確保したものの補正予算でさらに+3800万円の増額(被保護者が増えたため)となっていることを考えると、後から補正をかけなければならなくなるのではないかと心配です。
もう少し細かくみてみます。
民生費の児童福祉費から
待機児童が多摩地域最悪の小金井市ですが、待機児童の減少に向けての費用が増えています。また昨年オープンした児童発達支援センターが今年度は1年分運営費がかかるのでその分が増えています。
次は総務費
庁舎建設の設計料が増えていますが、職員人件費が減ることにより全体としては約3900万円減っています。
次は衛生費
ごみ収集経費が増えているのは収集運搬の委託料が増えているため(原因不明)
ごみ処理経費が減っているのは最終処分場の一部事務組合への負担金が減ったため
ごみ減量啓発費が減っているのは一般財源以外(国や都の補助以外)が入ったため(基金を繰り入れている)
全体としては約7700万円減
土木費については主に人件費が減少。全体としても2600万円減っています。
教育費は細かいものがいろいろ増えていますが、大きいものは小学校の給食の一部が委託となっため人件費から給食費に大きく振り替わっています。全体としては1700万円減少。
その他の費用です。
商工振興経費が減った大きな要因はベンチャー・SOHO事務所の工事費がなくなったこと。
全般的に、福祉などサービスを受ける人の増加によって増えるものに対する一般財源が増え、その分人件費の削減によってまかなっているのがみてとれます。
<コラム1>新規事業を分類してみた
小金井市の予算説明書にある62の新規事業を見てみると、、
1.投資的(基本的に一回限り)のもの:24件
2.国や都の事業(緊急雇用対策) :7件
3.5~10年に一度ぐらい必要になるもの:6件
4.備品購入:5件
5.計画づくり:3件
6.経常的なもの:17件
新規事業というと、今までなくて今後ずっと継続していく事業が思い起こされますが、よく見てみると一度きりの投資経費もあります。
とはいえ、経常的(毎年継続する可能性のあるように思えたもの)なものも17件(なお廃止するものは4件)あり、やはりスクラップ・アンド・ビルドとはいえないようです。
おそらくこのような新規事業やレベルアップ事業がいっぱい並んでいる予算説明書になっているのは新しく事業をすると喜ぶ人が多いだろうという発想に基づくものと思われます。
一般財源がどんどん増えている時期はよいのですが、現在のような時期だとかえって市民を不安にさせるように思います。
<コラム>一般財源の謎
一般財源は何に使ってもよいものですが、実は市の予算書で一般財源とされているものと、法律上の扱いと決算カード(総務省)の扱いは細かく違うようです。
1.予算書や決算カードの扱いと法律の扱いが違うもの
交通安全対策特別交付金
道路交通法では「道路交通安全施設の設置及び管理に要する費用」に充てることとなっていますが、決算カード及び予算書では一般財源(何に使っても良い)になっています。
2.予算書と法律の扱いが違うもの
①都市計画税
都市計画税は地方税法で「都市計画法に基づいて行う都市計画事業又は土地区画整理法に基づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てるため」とあるが、予算書では一般財源扱い
②地方消費税交付金の一部
消費税等のうち地方消費税は1%分から1.7%になりますが、その増分は社会福祉に充てるように法定されているようですが、これも予算書では一般財源になっています。
ちなみに一般財源と特定財源(一般財源ではないもの)の境界があいまいなものもあります。
例えば東京都からの市町村総合交付金は一般財源ではないが使途が限定されているわけではない。また社会資本整備総合交付金(国土交通省の補助金)は、市が出した計画に対して交付されるもので一定の範囲内で融通は聞くものの個別のものに対して一対一で対応しているわけではなかったり、、。
いろいろと謎は多いです。