経常収支比率は財政の状態を見るのに重要な指標ですが、なかなかとっつきにくい指標でもあります。
ここでは、ちょっと長くなりますが、経常収支比率の内容について詳しくみていきます。
まずは経常収支比率の定義を見てみます。
経常収支比率 = 経常経費充当一般財源等/経常一般財源等
これではよくわからないですね。
まずは分母のほうからみていきましょう。
経常一般財源という言葉は、「経常」と「一般財源」 に分解されます。
「一般財源」というのは使い道が予め決められていない財源をいいます。
反対語は「特定財源」で例えば特定の事業のための国からの補助金などがこれにあたります。家計でいえば、給料が一般財源、会社から支給されている定期代が特定財源にあたるものです。
「経常」というのは臨時的でないものという意味です。
例えば家計でいえば給料が経常的なもの、車などを売ったときの収入が経常的でないものといえるでしょう。
分子の方は、経常経費充当一般財源=「経常経費」「充当」「一般財源」と分解できます。
「経常経費」のうち「一般財源」が「充当」されている部分の金額 ということになります。「経常経費」とは毎年かかる経費。例えば、市役所の職員の人件費や生活保護費などがこれに当たります。
例えば生活保護費の場合は国の負担する部分が3/4あるので、その部分を除いた部分が「経常経費充当一般財源」に該当する部分となります。
家計でいえば、家賃が「経常経費」にあたるもの、会社から家賃補助が出ている場合は家賃補助を引いた部分が「経常経費充当一般財源」になります。
まとめると、
経常収支比率は毎年入ってくるお金のうち、毎年でるお金がどれぐらい占めているかを示す割合
ということになります。
この割合が高いと毎年の収入のほとんどが決まったことに消費されていることになります。
このような状態を「財政が硬直化している」といいます。
経常収支比率は80%以下が望ましいとされていますが、その理由としては将来への投資的費用を確保するためといわれています。
一方、現在は基盤が整備されつつあり、それほど投資的な費用を確保する必要がないこと、高齢社会等のため福祉のための費用が増えており自ず経常収支比率は高まるので、あえて80%以下を目指す必要があるのかという議論もあるようです。
現状では投資的な費用の確保というよりも、経済的な変動への備えを持つことや独自の施策の実現のための余力を持つという意味のほうが大きいと思われます。
ここまでの話を表にまとめると次のようになります。
まずはその分母である経常一般財源が何から構成されるか見ていきましょう。
①市税(都市計画税を除く)
②地方譲与税
③利子割・配当割・株式等譲渡所得割交付金
④地方消費税交付金
⑤自動車取得税交付金
⑥地方特例交付金
⑦地方交付税(特別交付税を除く)
⑧交通安全交付金
⑨使用料(道路・河川・公園のみ):推理
⑩財産収入(財産貸付収入):推理
⑪諸収入(預貯金の利子?):推理
分子はこれらから支払われている経常的な支出ということになります。
ところで何が経常的で何が経常的でないかは予算書・決算書を見てもわかりません。
投資的経費が経常的なものでないことはあきらかなのですが。
○謎
地方税には普通税と目的税があります。
目的税は使途を特定している税のはずなのですが、どういうわけか、都市計画税以外の目的税は経常「一般」財源なのだとか。
ちなみに都市計画税は「臨時」一般財源に分類されるらしいです。
経常特定財源ならばまだわかるのですが。
大和田先生に聞いたところ「総務省がそういう風に決めているから」ということで、ネ ット上で探してみても納得できる説明を見つけることはできませんでした。
○留意点
経常というと、安定してある収入というイメージがあり、HPによっては「毎年固定的に収入される」というような説明があったりしますが、経常一般財源には法人市民税が含まれ、金額面では変動要素が多く含まれています。
ですから「経常一般財源=基本給」ではなく、「=賞与や手当てを含む給与」に近いと思われます。
(賞与は景気により変動するので)
したがって分母が固定的ではないので、毎年の経常収支比率は仮に経常的な支出が一定だとしても変動します。
端的に言えば平成19年度(法人税収絶好調)の経常収支比率と平成20年度(法人税収ぼろぼろ)の経常収支比率とは単純には比較できません。
むしろ毎年固定的に入る「経常的」歳入と考えるのならば法人税割を除いた(逆に都市計画税は加算)経常収支比率の方が指標としてはよいのかもしれません。