財政ミニ講座2019後編

前編の続きです。

前編は小金井市の財政状況。

今後歳入は増えない中で、歳出は増えることは間違いない。

そんな中で事業をやめることを含めて考えなければならないというところまででした。

最初に財政とは「みんなから集めたお金をみんなのために使う仕組み」と説明しました。

でもみんなのため。。。と一言で言っても、個々の行政サービスを見ると全員のためのサービスはほとんどありません。

今後増えると言われている児童福祉費にしても、高齢者福祉の費用にしても、生活保護についてもそうです。

ではなぜ、行政サービスとして税金を使って実施しているのでしょうか。

左下のキャラクターが「行政サービスだから市がやるべき」的な発言をして、

 それって「トートロジーじゃね?」と思うかもしれませんが、意外とそういうことを言ってしまったりします。

 極論すると昔は製鉄も国の建物の建設も国が行政サービスとして直接(民間の企業を使うことなく)行っていたこともありました。

 保育所や生活保護などが行政サービスとして出てきたのは戦後のことですし、

 DVへの対応とかが行政的な課題になってきたのはここ20年ぐらいのことです。

 このように行政がカバーする範囲は徐々に変わってきます。

 個人が費用負担するには重すぎるから。。。

 社会全体に効用が波及するから・・・

 など行政サービスが行政サービスとして行わなければならない理由は一つではないし、変わっていきます。

 

ちなみに教育に関する費用は公共経済学の教科書的な本を見ると公共財ではなく私的財として扱われていることが多いようです。ただ、これは経済学の著者がアメリカの人が多いからのような気がします。ヨーロッパの人だったらまた違う考え方をするような気がするのですが。

アメリカが教育に対する公共的な支出が少ない国の一つであることと関係しているのかもしれません。(残念ながら一番少ないのは日本ですが)。

みんなのためと言いながら、実は全員に効果を及ぼすようなものはほとんどありません。

 上に書いてあるように長い目でみると「社会的セーフティネットはみんなのために使うこと」といえますが、ある時点を取ってみれば一部の人が直接便益を受けるサービスであり、限られたお金を何に使うかをめぐっては利害は一致しません。

 その決め方の仕組みについて、財政講座では簡単に説明しました。

 予算案は市長が作るというところに違和感を感じる人がいるかもしれません。

 地方自治法では「普通地方公共団体の長は、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない」とあるので、法的には市長が作り、議会にはかるということになっています。

 実際は市の職員が考え、あるいは国や都の方針に従って作るのですが。

 

 国の政治と市町村の政治の制度上の大きな違いは二元代表制というところ、
 予算を作る市長も予算を審査する市議会も直接市民が選挙で選びます。
 SIMuでは、ゲームの参加者が市の部長として予算編成を行う役をしつつ、場面が変わると議員として他のチームに突っ込みを入れます。

 このゲームはもともと地方自治体の職員のために作られたもののようですが、予算を作る大変さとそれを審査する立場の両方を経験することができるというのは、市民にとってもよいことなのではないでしょうか。例えシミュレーションでも。
 

ちなみにイベント後の懇親会で、「財政は遠いイメージだったけど、身近で繋がっていることがわかった」と参加した大学生にコメントをいただきました。

言いたいことが伝わって本当に良かったと思った瞬間でした。

このスライドは市民も関わる話です。

財政講座の中では

「ロールプレイの中では職員と議員の役割を演じるが、普段は市民という方も多いと思う」

「選挙を通してつながっていると話したが、選挙の後、任せっぱなしではいけない」

「今お話ししたような基本的な仕組みなどしっかりした基礎的な情報をもとに

 市民は市政を見ていく必要がある」

「それに対して市は十分に情報提供、議会は報告をし、大事な問題ほど市民を巻き込んだ

 議論が必要になる」

という趣旨の話をしたかと思います。

これで財政講座は終了。財政講座というよりは、お金の使い方を決める仕組みの方に重点を置いてお話ししたので、「これが財政講座?」と思ったかもしれませんが、SIMuの前振りとしてはこの構成でよかったと思っています。