小金井とりもち団主催の”SIMuけいみらい2030で未来の街づくりを考えよう!”
のイベントの中での財政ミニ講座を担当しました。
ここではその内容を解説します。
なおイベントは2019年の11月10日と20年の2月9日に行われました。
なので平成30年度までの決算をベースにしています。
今回少しイラストも使っていますが、コミポで作成しています。これは表紙の画像。
Simuけいみらいとは、熊本県の職員が作った対話型まちづくりシミュレーションゲーム(ゲーム形式のイベント)SIM熊本2030の小金井+小平バージョンです。
SIM熊本2030についてはこちらを参照
けいはKoganeiとKodairaのKのようです。
参加者や関係者のなかには「けいみらい」というネーミングがよくわからない。という人も多かったようで・・・・。
さてこのイベントの参加者は仮想の都市の部長になって、今後の市を運営していく限られた財源で運営していくという条件に元に、他の部長と話し合いながら、市の将来を考えつつ、個別の事業についてどうしていくのか(より端的にいうと何をやめるのか、やらないのか)を議論していきます。
私はこのゲームを始める前の基礎知識(?)ということで持ち時間20分ほどで財政講座を担当しました。 実際は早口になってしまい、2回とも15分ぐらいになってしまいましたが。
まずは「財政とは」という話から入ります。
財政についてはいろいろな説明があるかと思いますが、私は「みんなから集めたお金をみんなのため使うしくみ」と説明することにしています。学問的にはあまり正確ではないかもしれませんが。
「みんなから集めたお金」というのは税金のこと、「みんなのため」というのが歳出になります。
「しくみ」というのがポイントで、お金を集めるのも、支払うのも法律や条例などに定められた手続きに従って行われます。
ところで、「みんなのために使うお金をみんなから集める仕組み」ではないの?という疑問があるかもしれません。
別に間違っていないのですが、感覚的には入ってくるお金はだいたい決まっていて、その中で歳出を決めていると面のが特に地方自治体では大きいのではないかと思います。
実際のところ欲しいサービスを決めて、必要なお金を計算して、それをまかなえるお金を徴収するという仕組みにはないっていないと思うのですが、どうでしょう? 国の場合はどんどん借金をできる(してしまえる?)のでそうでもないかもしれませんが。
普通であればもう少し「財政とは」の話が続くところですが、講座では小金井の話に入っていきます。
小金井は財政が苦しいと言われることがあります。
ところで、そもそも財政が苦しいって何?という話です。
財政については、企業活動よりも家計に例えた方がわかりやすいと思っています。
企業活動はいかに利益をあげるかが大きな目標ですが、家計はお金を消費して幸せになることが目的だからです。地方自治体もお金を貯めることが目的ではなく、市民の幸せのためにお金を使うのが目的で、お金を貯めるのは将来に備えるなどゆくゆくの市民の幸せのためです。
家計が苦しいといえば、収入の割に係るお金が多い状態、貯金が少なく、借金が多い状態といえるでしょう。自治体の財政についても同様に歳入の割に必要なお金が多い状態。貯金(基金)が少なく、借金(市債)が多い状態が苦しい状態といえます。
では、小金井は財政が苦しいのか?
先に言うと、この後のスライドでも結論は出していません。
(それでは消化不良という方はこちらを)
武蔵野や三鷹と比べると豊かではないですが、全国的にみると恵まれている方だと思いますし、ましてやかつての夕張のような危機でもありません。
ただ言えるのは、「これからは苦しくなる」ことは確実であるということ。
財政講座ではなぜそうなるのか?ということを説明していきます。
これからの小金井の財政を占うために、これまでの財政状況について説明します。
まずは小金井市が何にお金を使っているかを上のグラフは表しています。
平成の30年間で約200億円歳出が増えています。
ざっくりいうとそのうちの大半が民生費の増加となっています。
平成30年度は特殊要因があるので、あまり特殊要因がない平成7~9年ごろと平成29年を比較すると
歳出は+100億円、民生費の増加とほぼイコールです。
その間に増えているものは衛生費が+10億円、逆にその分教育費が減っている感じです。
最近大きく伸びている民生費の解説です。
民生費とは簡単に言えば、福祉のための費用です。
大きくわけて社会福祉費、児童福祉費、生活保護費があります。
予算書・決算書では国民年金事務費もありますが、金額が少ないので割愛。
社会福祉費という言葉はなじみがないかもしれませんが、内容は障害者と高齢者(高齢者福祉のための費用と介護保険や後期高齢者特別会計への繰出)そして、国民健康保険のための費用で大半を占めています。
見ていただければわかる通り、児童福祉費が大きく増えていることがわかります。
日本は子供のための歳出が低いと言われていますが、意外と多いのでは?と思うかもしれませんが、教育費も含めた子ども向けの歳出としてはやはり他の国と比べると少ないようです。
高齢者向けは少なそうに見えますが、一般会計以外の部分に隠れているので、実態としては公的な支出としてここに見える金額よりはかなり多くなっています。
(例えば国民年金は市の財政には出てきませんが小金井市民に対する支払いは100億円をこえているものとおもわれます。)
社会福祉費は介護関係の費用が平成12年から一般会計→特別会計に移されたので一時減りましたが、その後増えています。
また生活保護費も平成の前半は10億円程度でしたが、現在は30億円程度とこれも大きく増加しています。
今回は児童福祉費に関する話です
児童福祉費のうちの多くは、保育園関係の費用です。
保育園の児童数は特に平成26年以降増え方が大きくなっています。
その背景としては、そのころ多摩地域でも最悪の待機児童発生率となり、その対策として保育園の開業が促進されたことがあげられます。
公立保育園の定員はほとんど増えず、私立保育園が増えていることがわかります。
私立保育園に対しても市から補助が出ているので、私立保育園が増えても児童福祉費も増えます。さて、今後の予測です。
世の中では少子化と言われていますが、小金井市では未就学児の人口は増えています。
推計では減少しているのですが、住宅開発で若い世代が流入しているためか、実績は増え続けています。
平成25・26年ごろに待機児童が大幅に増えたのは、推計の読み間違いと、読み間違いを実質的に認めず、そのための対応を取らなかったことが大きな要因です。
今後ですが、子供の数は大きく増えないにしても、それほど減らないと考えらえます。
また見ていただければわかる通り、未就学児は6000人、保育園は2000人ちょっとであり、今後の保育需要を考えると保育園の児童するも増える。つまり、保育園関連の費用は今後とも増えていくことが予想されます。
児童福祉費は増えてきそうという話をしましたが、高齢化に伴って増える費用も当然ながらあります。
まず高齢者の人口が増えていきます。平成の最初は10%程度だったものが現在は20%越え、将来的には30%近くまでなると予想されています。割合だけでなく、実数も大幅に増えることが見込まれています。
当然のことながら、後期高齢者の人口も増えており、これに伴い後期高齢者健康特別会計の歳出も増えています。
将来的にも増えることは間違いありません。
介護にかかる費用についても同様です。
高齢者の中でも75歳以上の後期高齢者の割合が増えてくるので、高齢者の人口の増え方よりも歳出の増え方の方が大きくなっています。
そして高齢化の影響はこれだけではないのです。
実は高齢化に伴って、生活保護費や障害者福祉費も増えると見込まれています。
なぜならば、実は生活保護者のうちの40%、障害者のうち70%は65歳以上の高齢者だからなのです。
つまり高齢者が増えれば生活保護費も障害者福祉費も増えるということ。
障害者のうちの約45%は肢体不自由、加齢によって足が悪くなって障害者認定されているのではと読み取れます。(違うかもしれません。)
というわけで、これまでの話を総合すると今後民生費は増えていくということは間違いないと思われます。それだけではありません。
既に10年以上前から言われている話ですが、人口が大きく増加し、その時に建てられた小学校などの建物の更新の費用がこれからかかると言われています。
グラフを見ると、近年は財政状況が厳しく、公共施設を建てていないことがわかりますが、今後40年・50年経った建物をどうするかが課題となります。
仮に建替えなくても古い建物は管理費や修繕の費用が多くかかってきます。
民生費だけではなく、こういった費用も多くかかるようになってくるのです。
またこのグラフには表れていない下水道の更新も大きな課題です。
詳しくはこちらの資料を参照してください。
これまでの説明で、今後歳出が増えるという話をしました。
今回は歳入の話です。
自治体の財政は歳出=歳入となる構造なので、歳出が増えれば歳入も増えていることになります。
自治体の歳入には借金や前年度からの繰越金なども含むことに注意をする必要があります。
さて、平成20年からの10年間で歳出が100億円近く増えていますが、ほぼ民生費の増加と同額になっています。
その増えた費用は何で賄っているのでしょうか?
その過半は国や都からの支出金です。
例えば生活保護費は給付費の75%が国が負担することになっています。
逆にそれ以外は市が負担することになります。
小金井市は市税が増えているので、ある程度は市税の増加でまかない、あとは消費税増税の地方の取り分の一部が回ってきています。
これを見ると市税は増えているけど、民生費の増加に回っている(直接の関係ではないで
すが・・)ことがわかります。
ところで、小金井市の場合はざっくりいうと歳入のだいたい半分が市税です。残りの2/3が国や都からの支出金になっています。
国や都からの支出金は使途が決まっています。民生費の増加に伴って増えているといってよいでしょう。
民生費の増加は国や都からのお金と市税、消費税でまかなっているという話でしたが、今後増える民生費、公共施設整備をどう賄うのでしょうか?
今後とも増える民生費のうち半分から2/3は国や都からの補助金がつくと想定されますが、残りは自前の財源を確保する必要があります。
それでは市民税はどうでしょうか。小金井市は人口が増えているので個人の市民税は増えています。(10年前+3億円、20年前+7億円)
しかし、日本全国の人口が減っていくなかで、おそらく長期的にはどこかで減少に転じますし、働き手の人口は間違いなく減っていきます。
固定資産税もマンションなどの建物が増えているので増えています(10年前+10億円、20年前+20億円)
それではこれからも増えていくか?
固定資産税は土地と建物にかかりますが、地価が今後も上がりつづけるとは考えにくいですし、建物は3年ごとに評価替えがあり、新しい建物が建たない限り減少していきますが、いつまでも増え続けるとも考えにくい。
また法人市民税ももともと少ないですが、大幅に増えることは期待できなさそうです。
それでは地方消費税交付金はどうでしょう。
消費税10%(正確には消費税7.8%。地方消費税が2.2%)のうち2.2%分が地方に来ます。
2.2%のうち半分は都道府県がとって、残りを市町村に割り振ります。
8%のときは1.7%であったものが2.2%になるので、約1.3倍。平成30年に比べ6億円程度増える計算になりますが、増加は一度きりです。
そう考えるとあとは借金をするのか?でも借金は返さなければなりません。
とすると、すでにある事業をやめることを含めた検討をしていかないとお金をねん出できないことは明らかでしょう。
SIMuのイベントでは「どの事業をやめるか」ということについて悩みながら議論をすることになるのです。